暁 の ヨナ ジェハ。 【暁のヨナ】最新176話のあらすじネタバレと感想を紹介!花とゆめ2019年13号6月5日発売

【暁のヨナ】最新176話のあらすじネタバレと感想を紹介!花とゆめ2019年13号6月5日発売

暁 の ヨナ ジェハ

その日の朝食を済ませ、次の仕事にかかる前のしばしの憩いの時間のことである。 ごちそうさまでした、と行儀よく手を合わせた赤い髪の姫の眼前にやってきて、白銀の頭を深々と下げた者がいた。 「お暇をいただきたいのです」 一行はそろって目を丸くした。 唯一反応を示さなかったのはアオと戯れていたシンアだったが、彼も他の皆が一斉にぽかんと口を開けたのに気付いて、一歩遅れで手を止める。 大きな目を見開いたヨナをちらりと見て、口火を切ったのはジェハだった。 「僕やゼノ君ならともかく、キジャ君が暇乞いなんて珍しいね。 どうしたんだい?」 偵察……や、それにかこつけた息抜きに、ジェハが一行から離れるのはよくあることだった。 彼の能力の前には距離も地形もあってないようなもので、一日二日帰らなくても誰も気にしない。 ゼノは基本的に決まった役割もなく自由に歩き回っているので、ふと姿が見えなくなったり迷子になったりは日常茶飯事だ。 本格的に行方不明となれば、龍仲間が気配を感知し、青龍の目で探し当て、緑龍の脚で回収に向かう。 どちらも生活力には問題がなく、人にまぎれるのにも慣れたふたりだ。 おとなしくしていれば特に心配することもない。 おとなしくしていれば。 だが、キジャは違う。 白龍の里の箱入り育ちは、野山を歩けば虫に怯えて方向を見失い、野草の見分けも処理調理も、だいぶ慣れたとはいえおぼつかない。 人里におりれば貴人めいた振る舞いと際立った容貌、それからもちろん龍の右腕の相乗効果でどこにいても過剰に人目をひきつける。 また本人がそれに無自覚で、目立たないようにしようという意識が薄い。 武力的な意味での危険は全くない。 とはいえ、人目を忍ぶ身分で、どう考えても一人で外に出せる人物ではなかった。 「昨日、白龍の里の行商人さんと何か話してたみたいだけど」 関係あるのか、とユンが目でうかがう。 キジャは大きく頷いた。 「そうなのだ。 里の婆から便りがあってな」 「なんだ。 里心がついて、おばあさんに会いたくなっちゃったってわけ? それとも里で何か……」 ジェハがからかいまじりに何事か言いかけて、途中ではっと口をつぐんだ。 面白そうだと輝いていた目が、つと伏せられて曇る。 「心配するようなことではない」 珍しく焦りの色を見せたジェハを制するように、キジャが言った。 ジェハの様子に怪訝な顔をしかけたヨナとハクが、キジャの落ち着いた声音につられて彼に視線を戻した。 「ここから二日ほどの村に用があるのだ」 「行きたいところがあるのなら、皆で行ったっていいのよ」 「いえ、そのような! 姫様にお手間をとらせるようなことではないのです」 キジャは慌てて両手を固辞する形に振った。 「人を訪ねて、すぐに戻って参ります。 この周辺に数日落ち着くとのことでしたので、その間に」 深い森の奥に、清い沢が近い、日当たりの良い広場を見つけたのは昨日のことだ。 休養と旅の備蓄の拡充をはかるために、しばらくとどまろうという意見が出ていた。 考え込むポーズになったヨナに、キジャは少し間を置いてこう続けた。 「それで、もし姫様のお許しがいただけるならば……シンアも、一緒に連れて参りたいのです」 自分とは関係のない話、とアオとの戯れに戻っていたところに突如名を出され、彼なりには驚いたのだろう。 シンアはもの言いたげにキジャの方に面をつけた顔を向けた。 「むろん、シンア、そなたも良ければの話だ」 キジャは彼に、いつもの鷹揚な笑みを浮かべて頷いて見せた。 何か応えようとシンアの口が小さく開く。 だが、彼は言葉を探しきれずにヨナを振り返った。 皆一斉にヨナを注視した。 彼女はキジャを見、シンアの面の下の表情を見透かすようにしばらく見つめてから、うーん、とひとつ唸った。 「自由に行けばいいのよって言いたいけれど……シンアまで連れて行きたいなんて、ただごととは思えないわ」 ヨナの大きな、光の強い瞳がまっすぐにキジャを見すえる。 「何があったの? どこに行くか、教えて」 目つきが鋭いわけではない。 責め立てる口調でもなかったが、心底案じる色をたたえたその問いに、答えずにいるのはこの場の誰にとっても困難だった。 「私事で、皆に話すようなことではないのですが……」 キジャはしばらく煩悶したのち、意を決して顔をあげた。 戻ってきたヨナは、笑顔でキジャとシンアに暇を許した旨を皆に告げた。 他ならぬ彼らの主が許可したとあっては異を唱えるものもなく、二人は翌日出発する運びとなった。 荷作りは午後から始めることに決まった。 それまではいつもどおりユンの指示のもと、各々の仕事にとりかかる。 ジェハはキジャとともに数日分の薪に使う木と、即席のかまどをしつらえる大きめの岩を調達するため川辺へ向かった。 キジャがいなければできない仕事は山ほどあった。 いかに怪力でもハクの腕力は人間の域からそれほど遠くは……はるかに遠くかけ離れてまでは、おそらく、いない。 それにジェハの龍の脚は、力自体はキジャの右腕と遜色なくともあくまで足なので、物を運んだり土木作業には向かないのだ。 シンアはユンに連れられて薬草探しに出かけている。 これも、青龍の目を大いにあてにしての仕事だ。 あまのじゃくなところのあるユンが素直に喜ぶのがシンアもうれしいのか、最近は役に立ちそうなものを見つけると、積極的に口に出して報告するようになった。 彼に採集を手伝わせるようになってから、ユンの商売の効率は飛躍的に向上しているという。 今日のうちに大量に採集しておいて、彼らが出かけている間は加工に専念しようという算段なのだろう。 心配性で面倒見のよいユンのことだ。 旅の注意事項を口をすっぱくして言い聞かせているに違いない。 ヨナの意向に逆らって、彼らを思いとどまらせることができるとしたらユンしかいない。 ジェハはそう考えていた。 四龍と暗黒龍は可愛い暴君に命を握られているようなものなので、彼女の決めたことに最終的には口出しできないのだ。 ジェハなどは、他の龍仲間よりはまだ諫言したい気持ちがあるのだが、彼女の言い分を聞いたら最後、それは仕方ない、間違っていない、としぶしぶ納得してしまうのが目に見えていた。 現に今も、彼女が許可したのなら大丈夫なのかなと思いかけている。 龍の血とは恐ろしいものだ。 ……いつもどおり、それを龍の血のせいにして彼はため息をついた。 だが今のユンもそうあてにはできない。 阿波で出会った当初は多少とがった態度を見せることもあった彼だが、最近ではめっきりヨナに甘くなってしまった。 彼女の志が、どんなに無茶で苦痛をともなう選択であっても、正しいからだ。 少なくとも、ジェハ自身も含めた彼ら一行の望む「正しさ」から、彼女の正義は決して外れない。 そう、信じさせるだけのものを彼女は見せてきた。 本人は認めないかもしれないが、ユンもすっかりヨナの導く世界に魅せられてしまっているのだ。 ジェハは隣を歩くキジャの横顔をうかがった。 光を弾くまっすぐな白銀の髪、日を透かして輝くような白い肌、すっきりと整った顎の線はなめらかで、少年期の名残りが見てとれる。 彼独特の強く迷いのない眼差しを伏せている今は特に、一種の詩情すら感じさせる、いかにも物憂げな美青年といった風情だ。 本質がそうでないことは百も承知とはいえ、どうにも不安を誘う生白さではあった。 ジェハはどうしたものかとため息をついた。 「先ほどからため息ばかりついておるな。 何か悩んでおるのか?」 キジャが不思議そうに彼を見上げた。 そうして目を上げると、先ほどまでまつわっていた詩情などは霧散してしまう。 ジェハは毎回、惜しいなと思う。 造形美には非の打ちどころもないが、ジェハの好みからすると彼の目の光と表情はあまりに健全すぎた。 彼の愛する頽廃と果敢なさの対極。 「君たち二人で本当に大丈夫かい?」 「? 何がだ?」 「何がって」 何か問題があるか、と真面目な顔で問い返されて、ジェハはあらぬ方を向いた。 何しろ一行の誇る世間知らず二人組だ。 しかも二人ともその自覚に乏しい。 「二日くらいの距離なら、僕が連れて行ったっていいんだよ。 用事を済ませて夕飯までに帰って来られるじゃないか」 「いやいや、それではそなたに悪い」 「何か騒ぎを起こされるより、よほど楽なんだけどね……」 騒ぎを起こすと決めつけられて、さすがにキジャが顔をしかめた。 「私は断じて騒ぎを起こしたことなどないぞ」 「え。 そうかな?」 「そうだとも」 自信たっぷりに断言されてジェハは知らず頬を攣らせた。 確かに、キジャが騒動の原因になったことはないかもしれない。 だが主たる原因がヨナであった場合、現場の恐慌の何割かはキジャが公衆の面前でさらけだす異形の腕が引き起こしている。 自覚がないにも程があるだろう。 「そなたも心配性だな。 私とシンアがそろっていて何の危険があるというのだ」 そういうことじゃないんだけどな、とジェハが言葉を選んでいるうちに、キジャはおもむろに右腕をメキメキと肥大化させた。 渓流の岩場から、ちょうどいい大きさの岩を探して拾うなどというまどろっこしいことはしない。 彼はがしりと自分の立っている岩場に龍の爪をたて、その巨大な手に握れる大きさにちぎりとった。 「わっ、乱暴だなあ」 ありえない力で割り砕かれる瞬間、微細な破片が勢いまき散らされる。 ジェハはひょいと後ろに跳んで粉塵から逃れた。 「何を逃げておる。 そなたも拾え。 その足元の岩がちょうどよいぞ」 「はいはい」 言い返す気にもならず、彼は無造作に足元の岩を持ち歩ける大きさに蹴り砕いた。 人の頭ほどとはいえ、ジェハには十分重い。 その数倍の大きさの巨岩を、まったく重さを感じさせずに軽々と抱える白龍の腕を目の当たりにして、彼はみたびため息をついた。 こう人外の怪力無双ぶりを見せつけられると、危険だなんだと語っても説得力に欠ける。 「もう止めないけどさ。 人里では用心しなさいね。 シンア君もいるんだから、あんまり目立たないように」 ふむ、と彼は考え込むように空いた左手を顎にやった。 「そうだな。 町では面は外して目隠しをさせるようにしよう」 「君の話だよ」 「わかっておる」 天然ボケに突っ込んだつもりだったのに、思いのほか素直な応えが返ってきた。 ジェハはえっと目を見開いた。 前を歩いていたキジャが振り返る。 「心配するな。 姫様のご迷惑になるようなことはせぬ」 信じろ、と彼はあのまっすぐな目と健やかな口調で言った。 ジェハは言葉を失った。 こういうことがたびたびあるから、彼との会話には注意が要る。 単純明快と油断させておいてその実、洞察も気遣いも一人前なのだ。 ジェハにとって、この手の不意打ちは一つひとつが命取りだった。 さらけ出されては生きていけない、弱い本音を言葉で包み隠しているような男には。 「シンア君たちも帰ってきてるみたいだね」 野営地に戻ると、草や木の実を種類別に並べかえるユンと、傍らにしゃがんでその手元をのぞき込んでいるシンアの姿があった。 ユンは時折分類する草を持ち上げては、隣のシンアに何ごとか説明している。 シンアがそれに合わせてコクコクと頷く。 膝を抱えて縮こまっていてさえ、シンアのほうがユンよりも一回りも二回りも大きい。 そのはずなのだが、見慣れてしまったせいなのかジェハの目にはもうそれが異様とも映らず、微笑ましい交流と思うばかりだった。 にこにこと眺めるうちに、シンアが顔を上げた。 つられてユンがジェハとキジャを見とめる。 ユンのさぐるような視線を感じて、ジェハは肩をすくめて見せた。 別に示し合わせたわけではないが、考えることは同じなのだ。 言外に説得失敗を伝えると、ユンが眉間にしわをよせる。 役立たず、と辛辣な声が聞こえた気がしてジェハは苦笑した。 その一幕に気付かぬふうに、キジャがシンアに話しかけた。 「シンア。 薬草の勉強か?」 シンアがキジャに顔を向けながら、べんきょう、と口の中で繰り返す。 そうするうちに言葉の意味を察したのだろう、シンアはこくりと頷いた。 「名前教えてもらって、た」 「そうか! それは良いな。 私にもそなたから教えてくれぬか?」 またひとつ頷いたシンアに、キジャは破顔していそいそと彼の前にしゃがみこんだ。 ジェハはその様子をのんびり眺めた。 意外に、と言ってはなんだが、シンアについてはそれほど案じる必要を感じなかった。 生い立ちの不幸……不幸と、聞いてすぐにジェハは断じた里の日々の賜か、心幼い青龍は生き延びることにかけては一行でも指折りの手練れだ。 何でも食べられるし、どこでも眠れる。 人里で社会生活を送るのはまだ困難だろうが、ひとたび野山にまぎれてしまえばどうにでも生きていけるだろう。 それに、とジェハは思う。 彼の心はいまだに誰よりも幼く物事を知らないが、そうでありながら彼独特の個性はしっかりと大人としての成長を遂げている。 彼は本質的には、おそらくひどく用心深く、理性派なのだ。 視えた物事を彼なりに把握するまで観察をやめない癖や、敵意をはっきり向けられるまで武器を抜かない傾向からもそれは見てとれた。 あくまでヨナに危険がない範囲で、との注釈つきではあるが。 直情径行、猪突猛進を絵に描いたようなキジャとは正反対の資質だ。 今はキジャやゼノに引っ張られて無邪気な子供時代のやり直しを謳歌しているが、それが落ち着けば、その思慮と判断を頼れるようになることだろう。 ……ヨナに危険がない範囲で。 二度目の脳内注釈に、ジェハは一人苦笑した。 こればかりは、個人の性質に係わらず四龍の本能なのだから仕方ない。 二十五の齢まで世間に揉まれて、大事なものもこだわりもそれなりに育ててきたジェハでさえ、どうしようもなく抗えないのだ。 闇の中で自我を眠らせてきたであろう幼子が、外から殻を打ち破った手に、初めて射した欲動の光に、無抵抗に引きずられるのは当然の摂理だった。 解る、なんて言葉は死んでも使いたくないし、伝える気もない。 だが、おそらく一行の中でジェハだけが、それを理解することができた。 突然眼前に開かれた世界の、溺れ死にそうな広大さ。 龍の脚と龍の目の持ち主にとっては特に、流れ込んでくる情報は大河の激流のようで……きっとまだ、眩暈が続いているような気持ちでいるはずだ。 彼があるべき「本来の自分」を確立するには、まだ時間が必要だろう。 まあ心配はあるまい。 今回、当のヨナはこちらに残るわけだし…… 「ん?」 そこまで考えて、ジェハはふと首をかしげた。 基本、行動に慎重なシンアが、キジャをもしのぐ直情型になる何かが、赤い髪の少女の他にもあったような。 何だったっけ、とジェハは空を見つめた。 だめだというのに急流に飛び込んで案の定流されたり、妙なものがとり憑いていたという石像を考えなしに斬り落としたのは。 彼がそれらの原因を思い出すと同時に、プッキュ、と足元で語尾上がりの奇怪な鳴き声が響いた。 視線を向けると、青龍の小さな友達ははかったようにジェハの肩までとことこと駆け上ってきた。 無意識にそのふかふかの胴体を撫でながら、ジェハはつぶやいた。 明日以降は、ちまきと干し肉と漬物の壺、シンアの背嚢に入ってるから計画的に食べるように。 いっぺんに食べ尽くさないように、キジャ、ちゃんと見ててよね」 朝の森に、ユンの澄んだ声が響く。 言いつけにキジャが素直にうむと頷くのを待たず、彼は立て板に水と喋り続けた。 「あと、水飲むときはきれいかどうか確かめるんだよ。 シンアの目で見てきれいな水がなかったら、ちゃんと沸かしてから飲むこと。 あっ、火をおこしたら絶っっ対消すの忘れないでよ。 あとこれ、胃腸の薬と傷薬と、熱さましとやけどの薬と……やっぱり解毒薬も持ってたほうが、」 「ユン君ユン君」 追加の薬をとりに天幕に駆け戻ろうとしたユンを、苦笑まじりのジェハの声がとめた。 「そろそろ出発しないと、日が暮れてしまうよ」 「うむ、毒のあるものは食さぬようにするゆえ、解毒薬はいらぬだろう」 ジェハの目配せに気付いたキジャも加勢する。 だがユンは足を止めなかった。 「でも毒蛇とか毒虫とか」 「シンア君なら噛まれる前に気付くよ。 ね、シンア君?」 蛇、虫、とキジャが騒ぎ出す前にジェハがフォローを入れる。 シンアが珍しく「うん」と口に出しながら頷くと、ユンはようやく落ち着いた。 しぶしぶ彼らに向き直る。 「じゃあいいけど……とにかく、何かあったら花火あげること。 夜なら山向こうでも見えるはずだから。 すぐに行くから。 ジェハが」 「うん、僕がね」 「あまり心配するでない。 私がついておるからには、シンアの安全は保障するぞ」 心配なのはお前だ、という言葉を、一度は全員が呑み込んだ。 だが、我慢ができなかったのか、余計な軽口を挟んだ者がいた。 「シンア、周囲の警戒頼むな。 白蛇は鈍いからよ」 「ハク!」 瞬時に目を吊り上げるキジャと、応戦しようと身構えるハク。 いつもの風景が繰り広げられる。 最後にそんなひと騒ぎを経て、二人がようやく背を向けたときだった。 シンアがふと気付いたように振り返った。 「アオ」 おいで、と静かに呼びかける。 見送るヨナの頭に乗っていたアオが、ぷっきゅーとひとつ鳴いてぴょんと跳び上がった。 隣のハクの頭からゼノの頭、キジャの背負う背嚢と次々に飛び移って、定位置のシンアの肩に収まる。 「あっ」 「ジェハ? どうしたの」 しまった、とでも言いたげな顔で跳び去るアオに手をのばしかけたジェハを、ユンが見とがめた。 「あー……いや、なんでもないよ」 シンアの頬に幸せそうに鼻面を擦り寄せるアオと、そちらに軽く顔を傾けるシンア。 相思相愛の一対に、彼は何も言えずに苦笑したのみだった。 「あーー!」 無自覚に大声をあげてしまって、ユンはあわてて口をおさえた。 「しまった……」 目の前で、炉にかけた鍋がぐつぐつと煮立っている。 中には水に浸かった七人分の米。 うっかりいつも通りの分量を計って炊き始めてしまったのだ。 別に、余分に炊いたって、小柄なヨナも含めて大飯食らいぞろいには変わりない。 二人分だろうがあればあっただけぺろりと食べてしまうだろう。 だが問題はそこではなかった。 「せっかくちゃんと計算してたのに」 山でとれる食材は、その日ごとに処理したり備蓄に回したりと臨機応変に取り扱う。 だが米や加工品、調味料の類は人里で購入する他ないので、きっちりと量をはかって管理しているのだ。 今夜余分に炊いた分を食べてしまったら、待っているのは数日後、空腹をかかえて森をさまよう珍獣どもという地獄絵図である。 「あーあ」 おむすびにして翌朝に回すか。 さほど気温は高くないから大丈夫だとは思うが、腐敗予防に塩を追加して笹の葉にくるんで……ひとつまみとはいえ、塩だってタダではない。 普段ならそこまで惜しむほど吝嗇ではないつもりだが、自分の不注意と思うと無性に気になる。 「なんか調子くるっちゃうな……」 大声に慌てて跳び上がったらしきジェハの、夕空に浮かぶ飛形を見ながらユンは情けない顔になった。 明け方になってずいぶんと冷え込んだ。 昨日作った即席の炉に木くずを放り込んで火を強めながら、ユンは手のひらに息を吐きかけた。 「今朝は冷えるわね」 天幕から出てきたヨナが、外套を体に巻きつけながら火の前にしゃがみこむ。 「うん……」 「シンアは寒がっていないかしらね」 人一倍寒がりで、何も言わずにじっと震えているいつものシンアの姿を幻視するようにヨナは火の向こうを見つめた。 そんな朝には、普段は寝起きの悪いゼノがなぜか早くに起きてきて、元気いっぱいでおしくらまんじゅうを仕掛けるのが常だった。 シンアの第一の兄を自称するキジャのことだから過剰に気遣ってはくれるだろうが、上品な彼におしくらまんじゅうまでは望めまい。 「毛布、余分に持たせたから大丈夫だとは思うけど……」 「さすがユン。 よく気が付くわ」 心底感心したといった体でヨナが嘆息する。 あけすけなほめ言葉に、ユンは面映ゆくて鼻をこすった。 「だからこっちの毛布、一枚少なかったんだね……」 頭上から降ってきたどんよりした声と影に、ユンとヨナは二人同時に真上を向いた。 見上げた先には、あからさまに寝不足の目元をしたジェハの逆さの顔があった。 「道理で寒かったな」 「寒かった寒かった」 続けて沢の方から戻ってきた見張り番のハクが、わざとらしくぶるりと震えて見せた。 天幕の中から遅れて出てきて、笑顔で同調したのはゼノだ。 「……二人は天幕ないんだし、仕方ないでしょ」 仲間うちで軽く贔屓をした自覚がなくもなかったユンは、言外にとがめる三人から目をそらした。 なにしろ相手は一行で一番世間知らずで、一番素直で、全く裏のない二人だ。 世間ずれしまくって裏表があってちっとも素直でない大人どもより、世話を焼いてやりたくなるのは仕方ない。 「緑龍はくっつかせてくれねえからなあ。 ゼノいつも青龍とモフモフにくっついて寝てるから。 どっちもないのはさすがに厳しかったから」 「そんなこと言って、結局寝ぼけてくっついてきてたじゃないか。 君、寝相悪いよゼノ君」 「あり? そうだっけ?」 とぼけた調子でゼノが笑う。 「白龍と青龍、早く帰って来ねえかなあ」 「そうねえ」 しみじみと同意したヨナにユンは呆れた。 「昨日出かけたばっかりだよ」 「わかってるけど、だって心配よ。 ちゃんと眠れたかしら? 起きられたかしら?」 「大丈夫だよ」 口をはさんだのはジェハだった。 「夜が明けてすぐに起き出して、ちょっと前から移動し始めたみたい」 はぐれてもいないし、移動速度も安定している。 なぜか疲れきった様子でそう告げたジェハを、ユンは訝しんで見上げた。 「なに? ろくに寝ないでキジャたちの気配追いかけてたってこと?」 「うーん、まあ……何かあったら出動しないとと思ってたら、つい」 そんなつもりじゃなかったんだけど、とジェハが苦笑する。 「つい、じゃないよっ」 ユンはあきれて声を高くした。 お兄さん、などと普段から一行の長男を自称しているからといって、ここまで面倒見良くなることはない。 一行の母と称される自分のことは棚にあげてユンは思った。 「朝ごはんできるまで寝ててよ。 気配たどれる人なら一応もうひとりいるんだから」 一応、と言いながら、火の前で船をこぎ出したゼノを一瞥する。 「何かあったとき、体調不良で出動できずに役立たずなんて罵られたくないでしょ」 「罵られるのはちょっと興味あるけど……そうだね。 役立たず呼ばわりはちょっと刺さるかな」 おどけながらも弱々しく笑みを浮かべ、ジェハは優雅な足取りで天幕へ向かった。 「ってわけだから、雷獣。 見張り明けで悪いけど、ジェハが戻るまで起きててよね」 武力担当が二人も不在の中、ユンとヨナだけで山を歩き回るわけにもいかない。 ハクもそのつもりでいたのだろう、はいよ、と軽く返事をした。 「ゼノは働いて」 ジェハに続いてこっそり寝に戻ろうとしていたゼノの首根っこを掴む。 朝食の支度、と渡された根菜を包丁で雑に断ち割りながらゼノがぼやいた。 「緑龍もボウズも心配しすぎだなあ」 「ゼノは全然心配じゃないの?」 隣で豆の筋をとりながらヨナが首をかしげる。 「ゼノが冷たいわけじゃないから。 それは誤解だから。 ゼノは白龍と青龍を信用してるだけだから」 「信用……してないわけじゃ」 ユンは鍋を火にかけながら、小さくつぶやいた。 ゼノがふはっと笑った。 「ボウズはそれでいいから。 あいつらも、ボウズに心配されたら喜ぶ」 「心配、かけないでほしいんだけど」 ユンは小声で呟いた。 心配、などと口に出すのも照れくさい単語に、知らず素っ気ない口調になる。 それを完全に見透かしている態度で、ゼノがユンの肩を優しく叩いた。 「だから、それでいいのさあ。 兄貴と叔父貴と母ちゃんじゃ立場が違うから」 「兄……叔父……って、だから母親じゃないよ!」 お決まりのつっこみを意に介さず、ヨナが真面目な顔で首をかしげた。 「ユンがお母さまで、ジェハがお兄さまで、叔父さまがゼノなの? それだと私は何になるのかしら?」 「母親じゃないって」 「娘さんは、そうだなあ」 ゼノがうーんと首をひねる。 「無視すんな!」 たまじゃくしを振りかぶって威嚇すると、ゼノはひええとわざとらしい悲鳴を上げた。 笑いながらヨナの背に身を隠す。 ヨナは悪ふざけに付き合ってゼノをかばってやってから、ユンに微笑みかけた。 「調子が出てきたみたいね、ユン」 「……まあね」 昨日から、らしくない自覚があった。 何をしていてもふと気付けば見送ったふたりの安否を気にしている。 毒虫に咬まれてはいないか。 道に迷ったり、崖から落ちたりしていないか。 盗賊にでも遭って……否、これは、心配すべきは盗賊の方。 一番怖いのは、花火を見逃しているんじゃないかということだ。 絶対に見逃さないとは言えない。 ここにはシンアがいないのだから。 あれこれ思い起こしていると、ユンはふと自分に向けられるヨナの、やたら優しく、幼子でも見守るような温かな眼差しに気付いた。 どうも見覚えのある笑みだ。 ユンは嫌な予感がした。 そういえば、調子が狂っていたことを思い切り素直に肯定してしまったような気がする。 ……そんなことを考えるうちに、ヨナはクスクスと笑いながら、ユンの予感どおりの言葉を口にした。 「ユン、可愛い」 「……」 なんでそうなる、とげんなりしながらユンは土鍋を手に立ち上がった。 朝早くに水につけて置いた米を、そろそろ火にかけてもよい頃合いだ。 いつもの作業、いつもの重み……そこでユンはハッと気付いた。 「あーーもう!」 またやった。 大声に驚いて腰を浮かせたヨナとゼノに何と言おうか考えながらユンは、水を吸わせてしまった七人分の米をむなしく見つめた。 [newpage] ……十射目。 木に印をつけた簡易な的の、幹にかすりもせず派手に外した矢を頭の中で数えて、ハクは射手に目をやった。 立て続けの失敗に、案の定少女はしかめっ面で的を睨んでいる。 木陰の死角から眺めるハクに気付く様子はない。 お姫様育ちには似つかわしくなく、苛立ちもあらわに足を踏み鳴らして彼女は矢を拾いに向かった。 今日はどうも調子が出ない様子だ。 気分をかえようと思ったのだろう。 再び位置についた彼女は一つ伸びをして、深く息を吸いながらゆっくり弓を引き絞った。 数秒、構えを保持してから、矢を放つことなく弦を緩めて首を振る。 それから少女は誰かを探すように顔を上げて視線をめぐらせた。 動きにつれて、森の深緑に明け染める空の紅色がさらりと広がる。 声を上げようと息を吸い込み、開かれる唇のうすい赤色に、ハクは知らず注視した。 「シンア」 放たれた名に、彼は拍子抜けして目を見開いた。 「あいつは留守ですよ」 気配もなく背後からかけられた声に、少女はきゃっと小さく悲鳴をあげて飛び退いた。 「ハク、いたの」 「弓の稽古で、シンアに何か?」 ヨナのそばに歩み寄りながらハクは尋ねた。 「ときどきね、姿勢が崩れていないか見てもらっているの」 ああ、とハクは得心して頷いた。 「なるほど、そりゃ適任ですね」 シンアの『目の良さ』というのは、単純な視力の問題だけではない。 常人ならば目が追いつかずに頭で省略してしまうような速い動きや色彩のわずかな差異、塊としてしかとらえられないような遠方や微小なものの群体も、細部まで細かく判別しているのだ。 そして判別できるゆえなのか、「違い」に対してとても敏い。 乏しいながら言葉を交わし、ともに戦ううちに、ハクはそのあまりに特異な能力を正確にとらえつつあった。 「シンアったら、容赦ないのよ」 何か思い出したのか、彼らの主はクスクスと笑いながら語った。 いわく、いつもどおり静かで優しい声音なのに、指摘する内容は厳密で、完璧に修正するまで決して合格を出さない。 「意外と、師匠に向いているんだわ」 シンアはいつでも、ヨナのすることを見るともなく視ていて、ハクが彼女に指導する内容もいつの間にか頭に入っている。 それはハクもよく知るところだ。 「そう言うなら剣もシンアに習ったらどうです」 拗ねるような口調を装ったのは、半ばふざけてのことだった。 ヨナもそれを知ってか、くすくす笑いでこう返した。 「なあに、ヤキモチ焼いてるの?」 「焼いてねぇし」 「シンアは頑固だから、一度嫌がられたら口説くのは大変なの。 お前でいいわ」 「俺『で』いい、ねえ」 ハクが肩をすくめると、ヨナは振り返った。 「お前がいい、って言ってほしいの?」 言いながら、少女はぐっと胸倉に顔を寄せて上目遣いにのぞきこんでくる。 大きな瞳は、わくわくと期待に輝いていた。 「……言ってほしいなんて、別に言いませんけど?」 「可愛くないわねハク」 期待したとおりではない返事に、ヨナは頬をふくらませた。 「私、何度も言ったわよ。 お前がいいの。 お前が必要よ」 「は……」 ハクはなにか軽口を返そうとして、失敗した。 言葉が出てこない。 さらりと、何でもないことのように、この姫は心を射抜く言葉を放つ。 単純な好意よりも、ハクのような人間には一番深く突き刺さる言葉。 どこで覚えた、とハクはにやつく口元を手で隠した。 「しかし姫さん、昨日から白蛇とシンアの話ばっかりですね」 「そっ、れは……っ」 自覚がないわけではなかったのだろう。 彼女の目元にぱっと血の色がのぼった。 「だって、気になるもの……」 なんだ、とハクは笑った。 やたらと不安視していたユンやジェハと違って、彼女はいたって平気な笑顔で彼らを送り出したふうに見えていたのだが、それも強がりだったわけだ。 「笑うことないでしょう」 唇をとがらせて彼女は言った。 「キジャが暇乞いなんて初めてでしょう。 キジャには私たちとは別に大事な場所も大事な人も、その人たちとのつながりもあるのよ。 ダメなんて言えないわ」 決然とした瞳でヨナは言った。 龍たちの主の強い眼差しに、ハクは刹那、呼吸を忘れた。 それに、と彼女は一転、暗い声になった。 「……シンアも、嫌がらなかったし」 「姫さん、実はそれに一番傷ついてたりします?」 「……」 図星だったようで、彼女は沈黙した。 横目に睨みつけてくる表情に、ハクは思わず噴き出した。 笑われてますます目つきが恨みがましいものに変わる。 「姫さんにもそういうのあるんだな」 「そういう、なに?」 「そういう、理解ある上司ぶりたいっつーか、うーん……見栄?」 思いやることも従わせることも、わがまま姫の気質を残して思うままに振る舞っているかに見えていたが、この一行の主導者という意識は一応あるようだ。 「ハクったら本当、意地悪ね。 もっと良い言い方ができないの?」 憤慨してぷいと背けた少女の横顔がやけに可愛らしく見えて、ハクは思わず目をそらした。 「まあ、いいことなんじゃないですかね」 「いいこと?」 「シンアが……」 ハクはつかの間空を睨んで言葉を選んだ。 「シンアが、姫さんから離れても平気になるのは」 他の三龍はともかく、シンアに関しては間違いなく、全面的に彼女の責任下だ。 最終的に選んだのはシンア自身とはいえ、閉ざされた世界、止まった時の中にいた彼に、冷静に行く道を判断する材料はあの時点ではなかったはずだ。 死の瞬間まで決まりきった、先の見えない不安とは無縁の日々。 それはそれで価値あるものだ……たとえどれほど不自由で、苦しみをともなうように傍目に見えたとしても。 それを否定することは誰にもできない。 ヨナはそこからシンアを、ある意味では無理やり引っ張り出したのだ。 シンア個人の性質の問題ではない。 人一人の、あるはずだった人生を激変させることの意味をハクは時折考えずにはいられないのだ……彼がどこまでも従う側の人間で、決して他人の生き方を変えようなどと思わないから。 とどまっていたなら生涯知らずにすんだ痛みや悲しみは、喜びと幸福だけで塗りつぶせるものではないだろう。 今はまだ後悔など感じる余裕もないかもしれない。 だがいつか、あの優しい化け物だった男が、本当の意味で世界の中でただひとり目を覚ましたときに何を……思うのか。 ハクにはあまり楽観できなかった。 今の楽しい時間には、きっと先がない。 それはハクの予感だった。 考えないようにしていても、優しい日常にまつわって消えることのない、終焉の予感だ。 つらい半生に見合うだけの幸福に浸してやりたいと思う。 シンアだけではない、人としての生から遠ざけられていた他の三龍にも同じく。 だが彼らを真に幸福にしてやれるのはヨナだけで、彼女の征く先にはおそらく、龍に安楽を許す場所はないのだ。 だからこそ、思う。 ヨナの傍らだけではない世界を、彼らは知った上で、自ら選ぶべきではないのか。 特に、他の道を知らなかったシンアは。 その思いからの発言だった。 四龍の運命をハクは知らないからこそ出た、言わば彼のエゴだ。 あたたかく居心地のよい家族ごっこの終わりに、独りで死ぬのは自分だけでいい。 ……自分だけが、いい。 そんな死の陶酔。 ハクの物思いをヨナはじっと見つめて、それからこう言った。 「離れるのがいいことなんて、私は思わないわ」 「へ?」 きっぱりと否定され、ハクは口をぽかんとあけた。 「私たちは、離れちゃいけないのよ」 やけに確信的な口調。 ハクはまじまじと彼女を見下ろした。 「なぁに、その顔?」 ヨナは不可解そうに首をかしげた。 「まだ親離れには早いわよ。 きっと今ごろ寂しがってくれているわ」 たぶん。 おそらく。 自信なさげな小声が続く。 ハクは頭の片隅でなぜか安堵を覚える己に気付いた。 緋龍王と四龍の絆とかいう与太に話が及んでしまうと、彼は完全な部外者である自分を自覚せざるを得ないのだ。 幸いこれは、そんな話題ではなかったようだ。 確かにヨナはシンアにとっては、ユンとはまた別の意味で母親の位置付けと言っても過言ではない。 いろいろと、本当にいろいろと無自覚なヨナだが、この点については本人も自覚的に振る舞っていた。 「寂しがって、ねえ。 でも別に嫌がらずに出てったんでしょ」 ちょっとした意地悪のつもりでそう言ってやると、少女はうっと言葉に詰まった。 「出て行ったって言っても、短い休暇だもの……さらわれたわけではないし……キジャも一緒だし……」 もごもごと口の中で言い募る彼女に、ハクはにやりと笑った。 「なるほど。 寂しいのは姫さんの方ですね」 「…………そうよ」 お、認めた。 ハクは意外に思った。 もう少し強がるかと予想していたのだが。 「矢を十本連続で外すくらい?」 「そうなの……って、ハク? いつから見てたの!」 真っ赤になって詰め寄る少女に、ハクは今度こそ声をあげて笑った。 ひとしきり意地悪となじられ、お返しにからかういつものやり取りの終わりに、ハクはふと気になって尋ねた。 「結局、白蛇は何の用事だって言ってたんです?」 「それは内緒!」 彼女はそこだけはきっぱりと言い切って、寄せたハクの顔を押し返した。 「お帰りなさい!」 「わあっ、ひ、姫様!?」 タックルの要領で飛びついてきた小さな姫を、キジャとシンアがあわてて抱きとめる。 ヨナがもっと落ち着いて出迎えるものと思っていたユンとジェハは、意外そうに顔を見合わせた。 二人の留守中、ヨナは彼らの前で寂しがる様子を全く見せなかったのだ。 抱きつかれた方の二人も、普段なら、抱きつかれて素直に抱き返したりはしない。 キジャは主との気安い接触をおおいに遠慮して、シンアはおそらくどうすればよいのかわからなくて。 そんな二人が、このときはあまり間をおかずにヨナの背に手を回した。 シンアは引き寄せられるまま頭をヨナの肩に埋め、キジャはそのシンアごと輪になるように抱きしめる。 キジャの顔は真っ赤になっていたが、それでもいつものように引き剝がしたりはしなかった。 ほどなくして気を取り直したユンが三人に駆け寄り、ケガはないか、体調不良はないかといつもの調子で問い質す。 続けてジェハも足どり軽く近づいて、からかいまじりのねぎらいを述べた。 「……まだ親離れにゃ早かったな」 腕組みしたまま、余裕の笑みでハクはひとりごちた。 ヨナに不埒な接触をはかりがちなジェハならともかく、キジャやシンアを警戒する必要を彼は感じていなかった……のだが。 「親ならいいけどなー」 温かい眼差しで仲間たちを見守っていたはずのゼノが、知らぬ間ににやにや笑いをハクに向けていた。 「……は?」 「娘さんはなー。 母ちゃんとは違うんだよなー」 「何の話だ」 「んー? 兄貴と母ちゃんと娘さんじゃ立場が違うーって話ー」 そう言って、ゼノは満面の笑顔になった。 問い質そうとするハクを待たず、ゼノも混ぜて、と歓声をあげて五人の塊に勢いよく飛び込む。 言い逃げされたハクは、腕組みを解くタイミングを失って、ごちゃごちゃと連なる六人をひとり呆然と見守るはめになったのだった。

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#暁のヨナ #ジェハヨナ 暁のヨナ詰め

暁 の ヨナ ジェハ

暁のヨナ・最新187話のネタバレ 今日からヨナに自由に会っていいはずだったのに、 「ヨナ姫の体調が優れない」と言われて見舞いすらもできない腹心たち。 シンアはそれを伝えに来た女に 「たとえそれが本当だとしても、ヨナが自分たちに会わないというはずがない。 ヨナに一体何があった?」と詰め寄ります。 しかし女は詳しいことはわからない様子で同様します。 めずらしくシンアが怒りを露にしています。 当然、他のメンバーも怒りが爆発寸前です。 ここでゼノから 「ハクが自ら志願して空の部族軍に一兵卒として入隊し、洗濯や給仕などをやらされていること」がジェハたちにも伝えられます。 そしてジェハが一人で様子を見に行くことになりました。 一方こちらはヨナ。 ヨナはヨナで、ジェドから 「四龍たちに会ってはいけない」と言い渡されています。 雷獣達だけでなく、 今後はケイシュクとミンス以外の人間との接触を経つようにとまで言われてしまいます。 これでは部屋に監禁されているようなものです。 「同盟とは私を愚弄するためのものだったの?」と凄むヨナに対し、ジェドは硬く口を閉ざして理由も言い訳も話しません。 そこでヨナはジェドに「スウォンに会わせて」と詰め寄ります。 空の部族軍で雑用仕事に奔走するハクのもとにやってきたのはジェハです。 ハクはおもむろにジェハに持っていた木材を投げつけて、ジェハを怪我人扱いにして「医療班に見せてくる」と仕事の現場から抜け出しました。 人目につかない場所で近況報告をしあう二人。 ハクも、 ヨナの体調が悪いという話を嘘くさいと感じたようです。 相手側の意向を無視してヨナに会いに行こうとするジェハに対して、ハクは「姫さんのことを頼む」と自分はここに残るといいます。 今宮殿に入れば反撃してしまうかもしれないからだと話します。 ハクは一兵卒に入り 「実力でえらくなってヨナの専属護衛のポジションを取り戻す」のだとの考えをジェハに明かしました。 場面は再びヨナの元へ。 スウォンへ面会するべく、彼の部屋へ訪れたのですが…王の間とは思えぬほど部屋の中はまるで物置のようになっています。 ヨナはミンスに連れられて、たくさんの書物にあふれた中で居眠りをするスウォンを発見しました。 ヨナははっと思い出します。 そういえば、ヨンヒ様もスフォンと同じ様な症状だった…。 見てはならぬ病だから、自分は他との接触を立たれたのでは…? 見てはならぬ病ということは普通の病ではない…死に至る病なのではないか…? ヨンヒ様はもう亡くなられているのではないか…? そしてスウォンンも、同じ病なのでは…? 気付いてしまった真実が、口からゆっくりと流れ出るように、ヨナの口から呟くように発せられ続けます。 その流れを止めようとしたのはミンスです。 真実を知ってしまえば死罪になってしまう!とヨナを止めようとします。 ミンスの動揺ぶりからみても、スウォンが死に至る病を患っていることは明らかです。 部屋にもどったヨナは、呆然としていました。 スウォンが死ぬ… しかし自分の父はスウォンに殺された。 スウォンは憎い相手…しかしじゃあどうして私は今立ち上がれないのだろう…。 放心のヨナの元にやってきたのは、ジェハです。 ジェハはヨナをハクのもとへ連れ出してくれるといいます。 しかしヨナはこれを拒否。 秘密を知ってしまった自分がハクと接触したことがわかれば、もしかしたらハクが死罪になるかもしれないからです。 ハクや皆を守るため、ヨナは仲間たちとの接触を絶とうとします。 話し声に気付いたのかジェドが部屋へと近づいてきました。 押し返すようにジェハを部屋の外に追いやるヨナ。 もちろん本心ではありません。 ハクに会いたい気持ちを抑えつつ、ヨナはたった独り、部屋でうずくまります。

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暁のヨナ183話/32巻のネタバレ!最新話は四龍の力とジェハの気持ち

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Contents• 暁のヨナ176話のあらすじと感想ネタバレ! それでは早速暁のヨナのあらすじと感想を紹介したいと思います。 暁のヨナ176話のあらすじと感想ネタバレを紹介! ジェハによってみんなのもとに運ばれたヨナ。 煙で喉をやられ、声が完全に出なくなってました。 高華国はヨナを救い、完全勝利だと雄叫びを上げます。 ゴビついに確保 ジェハがハクのもとに戻ると、ハクは持ってたゴビを建物の上から下に放り投げました。 下でヴォルドがナイスキャッチ! ハクがジェハに乗って空中へ飛び出すと、高華国の兵たちはそれを見て喜びの声を上げました。 この様子をケイシュク参謀が、どんな気持ちで見ていたのかが気になります。 戦は終結 千州軍との戦は高華国の勝利でした。 イン・クエルボ率いるトゥーリ族は北方へと撤退。 不戦条約を反故にしたリ・ハザラは投獄。 千州を完全に制圧し属国となった真国を合わせると、高華国の領土はイル王の倍になりました。 結局根源であるクエルボが捕まらなかったので、また戦は起きてしまいそうですけど。 ヨナとハクは火の部族の野営地で、天幕を借りて治療中です。 ユンが薬を貰いに行こうとすると、高華国の兵たちがユンに負傷者の手当を頼みに殺到します。 ヨナは声が出ないので手を振って、ユンに行くように言いました。 少しずつ日常へ 出ていったユンと入れ違いに、アルギラとヴォルドが入ってきました。 ヴォルドがみんなに挨拶のため頭を下げると、背中には縛られたゴビがいて不気味に笑ってます。 「四龍だぁぁ」って力ないオジサンになっちゃいましたね。 心配したアルギラがヨナに水がいるかと聞くと、ヨナはハクとのキスを思い出し赤面します。 アルギラがハクの欲しいものが肉だと分かると、あっという間にテントの外へ行ってしまいました。 ヴォルドは去っていったアルギラに、背中のゴビを見張るように言いますが時すでに遅し…。 代わりにジェハとキジャが見張ると言ってくれました。 やっぱり「四龍だぁぁ」と嬉しそうなゴビ。 国に帰ったら死刑ですからね…。 外から勝利の宴の太鼓が聞こえてきて、シンアはアオのためにご飯を探しに行きました。 ハクもお腹がすいたので起きて、宴会に行くことに。 ヨナからもお腹の声が聞こえてきたので、ハクが布団をはぎながら一緒に行くか聞きました。 ヨナは赤面しながら起き上がります。 その様子をしれっとかわいいと感じてるハクがいい…! 天幕に残されたのはヴォルドと、その背中のゴビを見張るキジャとジェハでした…。 変な空間w 声の出ないヨナとハクは宴会へ ヨナを抱っこして宴会へ向かうハク。 ヨナは喋れないけども、ハクに傷が開くからと口パクで伝えようとします。 ハクはじっと見て読み取ろうとしますが、伝わりませんでした。 この抱っこの仕方、いいな~!! ハクが宴会に顔出すと、火の部族が「ハク隊長」と慕ってきます。 ヨナはどこに行ってもたくさんの人を惹きつけるハクを、尊敬の眼差しで見ていました。 火の部族の兵がヨナに話しかけ、赤髪でヨナ姫だと気付きます。 みんな話しかけますが、先に宴会に参加してたゼノがヨナは喉を痛めて声が出なくなってると教えました。 しれっと肉飛べてるゼノ、可愛い~! そこにケイシュク参謀が来ました。 ケイシュク参謀がヨナ姫のことを聞いてきましたが、テジュンはごまかします。 ハクはヨナを連れてあっという間に逃げ出してました。 声が出ないことがじれったいヨナ ヨナはハクが走るので、出ない声で一生懸命目話しかけます。 でも伝わらずに、ヨナはムキになって耳元で口パクしました。 するとハクはビックリしてヨナを落としてしまいそうになり、慌てて抱きとめました。 ハク耳弱いんだ…。 ヨナはおろして欲しかったのだと口パクで伝えますが、ハクは肉が食べたかったんだと言ってきます。 ヨナが怒って叩いてると、急にハクがヨナを抱きしめました。 ヨナは自分は大丈夫だとポンポン叩くと、ハクは更に腕の力を強めました。 ヨナは涙が出てきます。 前回に引き続き甘々な展開!ついに気持ちが伝わるのかも…。 ヨナはハクに何か伝えようとしますが、咳こんでしまいます。 ハクがヨナに話さないように言って、テントに戻るように言います。 ハクはヨナが火事の中で、ヨナが自分になんて言ったか覚えてるかどうかを聞きます。 でもヨナは覚えてないので、ハクはそれ以上話しませんでした。 それがホントだったら良いとか、ハクもそれなりに動揺してるんでしょうか。 きこえた? そこにテジュンが来て、ケイシュク参謀に事情を話したら喉の薬をくれたと差し出されました。 ハクがその薬を心配してると、ヨナはあっという間に飲み干してしまいました。 飲み終えたヨナがしばらく咳き込んでしまい、ハクは心配してユンを呼びに行こうとします。 しかしそのハクの服を、ヨナはつかんで引き止めました。 そして小さな声で「ハクがすき」と伝えました。 ヨナはハクに聞こえたのか確認して、やっと伝えられたとヨナは笑いました。 感想 最後の小さな声で一生懸命気持ちを伝えるヨナ、可愛すぎでしょ! てか、隣にテジュンいますよね。 父王・イルに大事に育てられた箱入り娘。 慕っていたスウォンが父王・イルを殺害したことにより、城を追われる。 国中をハクと一緒に放浪し、様々なことを知り学んでいく。 途中ユンと四龍に出会い、仲間達と共に高華国にとどまらず、困った人達を助ける旅を経験していくうちに、成長していく。 今では王としての素質も現れてきた。 ハク 高華国の五部族のうち、風の部族の将軍・ムンドクの孫で自身も将軍を務めていた。 「高華の雷獣」と名高い武力をもつ。 幼い頃からヨナ、スウォンとともに育ち、ヨナの恋心を見守ってきた。 城を追われたヨナを守り付き従う従者だが、小さな頃から傍にいるため遠慮なく暴言も吐く。 ヨナには途中思いを告げている。 イン・クエルボ トゥーリ族の王。 現在は戒帝国千州も支配下におく。 ゴビ 真国の神官。 実験を握ろうと暗躍するも失敗。 戦の後、戒帝国へ。 ユーラン クエルボの嫁。 アルギラ・ヴォルド 真国で関わった武人。 テジュン 火の部族長の次男。 スポンサーリンク 暁のヨナを無料で読む方法!試し読みも出来る! さて面白かった暁のヨナ、読みたくなってきたんじゃないでしょうか。 そんなあなたのために今すぐ電子書籍で無料で読める方法をご紹介しましょう! 本屋に買いに行くのも、借りに行くのも天気次第で嫌になっちゃいますよね! それにネットでマンガを読むなんて通信量や料金、安全性なんかもいろいろ気になっちゃいますよね。 そこで安心出来る電子書籍サービスを見つけて来ました! それが、• です! こちらポイントを貰えるので、電子書籍が無料で読むことが出来ますよ! それでは、それぞれのおすすめポイントを紹介していこうと思います! U-NEXTのおすすめポイント 国内の動画配信サービスの最大手といえば、です! アプリ性能、コンテンツ数、対応端末・・・と以前よりも大幅に増えており、 現在では、動画配信だけに留まらないサービスへと発展しています。 しかも31日間無料キャンペーン!初めて登録した方は月額無料キャンペーンがついてきます。 jpのおすすめポイント CMで馴染みのあるmusic. jpですが、 実は動画、電子書籍共にとっても充実してるんです。 マンガの新刊を読むなら絶対「music. jp」 このサービスはポイント制です。 それだけ聞くと「え~動画見放題じゃないの~」となりそうですが、 その ポイントがヤッッッバイくらいもらえるんですっ!! 月額は3つのコースがあります。 コース 1780コース 1000コース 500コース 月額 税抜 1,780円 1,000円 500円 違い比較 所持ポイント:1,992円分動画ポイント:3,000円分 所持ポイント:1,330円分動画ポイント:1,000円分 所持ポイント:640円分動画ポイント:500円分 もちろん定番の30日間無料キャンペーンもやってます。 music. jpのすごいところはそれだけじゃないんです。 なんと無料キャンペーン中に1,600円分のポイントがもらえちゃうっ! 初月でマンガ7冊分も読めちゃうんです! さらにポイント還元がヤバイー!! マンガ1冊買うごとに10%ポイント還元、同じ作品を5冊以上まとめ買いで還元が25%!! 5冊買うと1冊無料で買えちゃうんです。 しかも!新刊は単行本と同じ発売日に購入できるので、新刊を読み続けたい方にはおすすめです。 暁のヨナ176 話のネタバレあらすじと感想• 暁のヨナを無料で読む方法 をご紹介してきました! 戦をきっかけに急展開! 長かったこじらせ片想いが終わるのでしょうか。

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